[No.03] 木曽ひのき精油成分の消臭機能に関する分子挙動の解析3

[NO.3]では、NO1,NO2で説明したラマンスペクトル解析に関して、もう少し細かく説明させてもらいます。

ラマンスペクトルは、照射した光が分子内の結合によって異なる波長で散乱されることを観察するスペクトルで、分子構造の解析が行えます。スペクトルの横軸はラマン散乱が起こる光の波長の逆数(周波数に相当)が、縦軸は散乱強度がプロットされています。(表1)

表1

有機酸のカルボン酸分子は、上の化学式にあるようにC=Oで表す二重結合がありますが、この結合は1個の分子では通常1700cm-1(単位はカイザー)にピークを示します。イソ吉草酸のような有機酸は上記図のように2分子で会合した状態が安定ですで、C=Oのすぐ横に隣のカルボン酸のHが来ます。このとき酸素原子(O)と水素原子(H)に弱い結合力が生じる結果として、C=Oの結合力が弱まり、ピーク位置が1650cm-1付近にシフトすることになります。そこに、αテルピネオールや水を加えると、酸同士の会合が切れて、αテルピネオールや水が孤立した酸分子の周りに来ることになります。このため、本来のC=O結合が示す1700cm-1付近にピークが移動することとなります。このピークの移動がイソ吉草酸の会合体の解離、αテルピネオールとより相互作用する状態になっていることを示唆しています。