[NO.1]に続き、木曽ひのき成分のひとつであるαテルピネオールについての分析報告となります。分析内容として、酸化合物悪臭成分を木曽ひのき精油と混合した際、悪臭成分を取り込んで保持する能力の比較実験をすることにより、消臭力が高い結果を得ているαテルピネオールが酸の2分子会合を切る作用を有していることが消臭機能において果たしている役割を検証しました。
実験内容として、酸化合物としては、分子量の異なる酢酸(分子量60)、イソ吉草酸(分子量102)、へプタン酸(分子量130)を用い、エーテル溶液を調製した(イソ吉草酸は2.6%溶液、他は0.5%溶液)。酸溶液0.1mlを2mlのガラスサンプル瓶に取り、水、αピネン、αテルピネオール、をそれぞれ加えた試験溶液を調製しました。(酢酸に対しては約70倍モル量、イソ吉草酸に対しては約25倍モル量、へプタン酸に対しては約150倍量としました)。各試料を入れたサンプル瓶を5Lテドラーバックに入れ、空気4Lを入れた後に、サンプル瓶の蓋を取り、所定時間後の酸成分上記濃度をGASTECのガス検知管81Lで測定しました。
図1に、酢酸、イソ吉草酸、へプタン酸を過剰の水、αピネン、αテルピネオールに混合した溶液から酸成分が蒸発して袋中の濃度が増加していく様子を評価しました。(試料調整に使用したエーテルは評価初期に先行して蒸発するため、評価への影響は無視できるものと考えます)。酸成分の分子量が異なると親水性/親油性特性が変化するので、水とオイル成分のより傾向に差が出ることも予想されましたが、結果としてはいずれの酸成分とも蒸気濃度は、コントロール>水≧αピネン>αテルピネオールの順になる傾向が捉えられました。ラマンスペクトルでの解析によりαテルピネオールの水酸基が酸成分の2分子会合を切ることが認められていますが、親油性による酸成分の溶解力と共に、2分子会合を切ることが酸成分と精油成分との親和性をさらに高めているものと考えられる結果となりました。
酸悪臭成分と木曽ひのき精油成分との混合液の中から酸成分が蒸発する様子を比較評価したところ、酸の2分子会合を切る能力のある水酸基をもつαテルピネオールからの蒸発量が少ないことが確認され、オイルとしての溶解性に加え2分子会合を切る特性が捉えた酸悪臭成分を逃がしにくくしているという結果を得ることができました。